借地や再建築不可の実家を相続したら。売るときに気をつけること
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不動産マスター ゆいの結論
借地の家は、地主の承諾があれば売れます。断られても、土地のある地方裁判所に申し立てれば、承諾の代わりの許可が出ることがあります。再建築不可と言われた家は、売り出す前に市区町村の建築の窓口で「本当に建て替えられないか」を確かめてください。
最初に確かめる2つのこと
| 借地かどうか | 土地の登記事項証明書(法務局で取れます)の所有者が親御さん以外で、親御さんが毎月か毎年「地代」を払っていたなら借地です。契約書と、地代の領収書や通帳の記録を探しておきます。 |
| 再建築不可かどうか | 市区町村(または都道府県)の建築指導の窓口で、家の前の道が建築基準法の「道路」か、敷地がその道路に何m接しているかを聞きます。住所と地番を書いたメモを持っていくと話が早く進みます。 |
「再建築不可」と聞いていても、調べると建て替えられる場合があります(下の「再建築不可とは」を参照)。売り方が大きく変わるので、ここを先に確かめます。
借地の家を売る3つの方法
借地の上の家を売ると、土地を借りる権利(借地権)も一緒に買主へ移ります。借地権を人に譲るには、地主の承諾が要ります(民法612条1項)。承諾なしで譲ると、地主は契約を解除できます(同条2項)。
| ① 地主の承諾をもらって、ほかの人に売る | 承諾と引き換えに、承諾料などの条件を地主と話し合うのが一般的と考えられます。承諾料の金額を決めた法律はありません。 |
| ② 地主に買ってもらう | 地主にとっては土地を自由に使えるようになるので、最初に打診する相手です。裁判所の手続き(下で説明)の途中で、地主が「自分が買う」と申し立てることもでき、そのときは裁判所が値段を決めます(借地借家法19条3項)。 |
| ③ 地主と一緒に、土地ごと売る | 借地権と地主の土地(底地)をまとめて1人の買主に売る方法です。買主は普通の土地として使えるので、借地権だけより買い手が見つかりやすいと考えられます。代金の分け方は地主との話し合いで決めます(推測:この方法を定めた法令はなく、実務での売り方として書いています)。 |
地主が承諾してくれないとき
買う人が借りても地主に不利になるおそれがないのに承諾しないときは、裁判所が地主の承諾に代わる許可を出せます(借地借家法19条1項)。
- 申し立てる先:土地のある場所の地方裁判所です。地主と合意すれば簡易裁判所でもかまいません(借地借家法41条)。
- 申し立てるのは売る前:19条は「建物を譲渡しようとする場合」の手続きで、買う人が地主に不利にならないかを見ます。買う人の目星をつけてから申し立てる形になります。
- お金の支払いが条件になることがある:裁判所は、許可と引き換えに地主へのお金の支払いや、地代などの条件の変更を命じられます(19条1項)。
- 手数料:申立ての印紙代は、土地の固定資産税評価額をもとに計算します(東京地方裁判所の案内)。市区町村で評価証明書を取っておきます。
地主の承諾も裁判所の許可もないまま家を買った人は、地主に建物を時価で買い取るよう請求できます(借地借家法14条)。ただ、買主にとってはトラブルの元になるので、承諾か許可を取ってから売るのが前提です。
再建築不可とは
建築基準法では、建物の敷地は道路に2m以上接していなければならないと定められています(43条1項)。これを満たさない土地では、今の家を取り壊すと、原則として新しい家を建てられません。これが「再建築不可」と呼ばれる状態です。
ただし、次の場合は建て替えられることがあります。
| 前の道の幅が4m未満でも、指定された道(42条2項の道路) | 道の中心から2m下がった線を道路の境界とみなすので、その線まで敷地を下げれば(セットバック)建て替えられます。再建築不可ではありません。 |
| 幅4m以上の道(建築基準法の道路ではない)に2m以上接している | 国の基準に合えば、特定行政庁の「認定」で建てられます(43条2項1号)。東京都では延べ面積500㎡以内が条件です。 |
| まわりに公園や広場などの広い空地がある など | 建築審査会の同意を得て「許可」されれば建てられます(43条2項2号)。 |
| 市区町村が「空家等活用促進区域」を定めている | 幅1.8m以上4m未満の道に2m以上接する空き家は、耐震性がある、地上2階以下などの条件を満たせば、認定で建て替えなどができる仕組みがあります(国土交通省 2023年12月)。区域があるかは市区町村に聞きます。 |
再建築不可の家を売るときに知っておきたいこと
- 価格は低めになりやすい:建て替えができず、住宅ローンの審査も通りにくいため、買い手が限られると考えられます。
- まず隣の家に声をかける:隣の土地とひとつにすると道路に2m以上接するようになり、隣の人が建て替えやすくなる場合があります。そのぶん、ほかの人より高く買う理由があると考えられます(推測:43条1項からの読み取り。実際に建てられるかは窓口で確認が必要です)。
- 先に取り壊さない:取り壊すと、建物を建てられない更地になります。今の家をリフォームして使いたい人にも売れなくなるので、買い手がさらに減ると考えられます。
- 専門の買取会社もある:再建築不可や借地の家を、そのままの状態で買い取る会社があります。仲介で買い手を探すより早く決まりやすい一方、値段は低めになりやすいと考えられます。
安く売れたときの税金の特例
空き家の3,000万円控除:借地の家でも対象になりえます。特例の対象の「敷地等」には、土地だけでなく「土地の上に存する権利」(借地権など)も含まれます(国税庁 No.3306)。家が1981年5月31日以前に建てられた、親御さんがひとりで住んでいた、期限内に売る、などの要件は期限チェックで確かめられます。
低未利用土地の100万円控除:3,000万円控除の要件に当てはまらず、売値が低いときに使えることがあります。主な要件は次のとおりです(国税庁 No.3226)。
- 2028年12月31日までに売る
- 都市計画区域の中の、使われていない(または利用が周りより著しく劣る)土地とその上の建物
- 売値が500万円以下(市街化区域や用途地域の中などは800万円以下)。建物の代金も含めます
- 売った年の1月1日に、所有期間が5年を超えている。相続した土地は、親御さんが手に入れた時から数えます(国税庁 No.3270)
- 土地のある市区町村から確認書をもらい、確定申告に付ける
ほかの特例と一緒には使えない場合があるので、どれを使うかは税務署か税理士に確認してください。
期限と、次にやることがわかります。入力した内容は送信されません。
この記事の出典
- 民法 612条(e-Gov)
- 借地借家法 14条・19条・41条(e-Gov)
- 東京地方裁判所 借地非訟事件 費用
- 建築基準法 42条・43条(e-Gov)
- 東京都都市整備局 第43条第2項に基づく認定・許可の取扱い
- 国土交通省 空家等活用促進区域の設定に係るガイドライン 参考資料
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 No.3226 低未利用土地等を売った場合の長期譲渡所得の特別控除
- 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期
一般的な目安です。最終判断は税理士・司法書士などの専門家にご相談ください。